オートフォーカス
今度は逃げようがなくて諦めるしかない、意識を戻して篤希はカメラを構えた。

篤希が誰かを探していた、見つけられなかったその視線の先にを見つめると求めていた人はまだ近くにいたのだ。

それが篤希の探していた人物だと気付いたのは絢子だった。

加奈はもう篤希の方を見ていない。

篤希ももう加奈を見てはいない。

絢子の視線も2人から離れ、手元へと落ちてしまった。

「撮りまーす!」





たとえ準備にどれだけ時間がかかっても、祭りというのはすぐに終わってしまうものだ。

カメラを担いで走り回っている間に気付いたら学祭の3日間は終わろうとしていた。

商品が売り切れて片付けも終わったところも、最後に売り切ろうと声を張り上げるところもある。

日も暮れて会場に残っているのはほとんどが在学生になった。

最後を閉める打ち上げ花火のアナウンスが構内に流れ、また違うざわめきが広がる。

最初の1発が上がり、学生からは歓声が沸き起こった。

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