オートフォーカス
自分がこんな顔をさせてしまったと篤希は心臓を掴まれたように体中が苦しくなった。

何か言わなきゃ、そう思って口を開く前に絢子が声を出す。

「私、皆のところに戻るね。」

立ち上がり絢子は篤希の言葉を待たずにその場から立ち去った。

その時間がゆっくりと、でもすごく早く感じられ、時の狭間に置き去りにされたような奇妙な感覚になる。

取り残された篤希は遠ざかっていく絢子の姿を見送ってカメラを見つめた。

体を動かす気にもならない。

確かに1年前なら篤希は絢子を受け入れただろう。

でも今は。

「顔に、出ている…か。」

混乱して渦巻く感情の中で祭りの終わりを告げる歓声を聞き流していた。


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