オートフォーカス
加奈には珍しく驚いた反応で大きく肩を揺らす。

勢いよく振り返った姿は本気で驚いている顔だ。

「あ、篤希…ごめん。変な声出しちゃった。」

「いや、こっちこそ。驚かせてごめん。」

「あはは、本当に驚いたよ。」

胸を押さえながら大きく息を吐く、そして怒る様子もなくやられたと言わんばかりに加奈は笑った。

悪いことをしてしまったような気持ちになったが彼女の明るい笑い声に篤希は少し安心して笑みがこぼれる。

「見かけたから待ってたんだ。教務課に何か用事？」

篤希の問いに一瞬顔を強張らせたが、加奈はすぐに彼女らしい笑顔で答えた。

「うん、ちょっとね。どうかしたの？」

「ああ、また撮影スポット教えてもらおうかと思って。」

シャッターを押すジェスチャーを付けて篤希は加奈に問う。

ああ、と納得したような表情で答えると加奈は宙を眺めて少し考えた。

何か思いついたのだろう、小さく口を開いて伺うように篤希を見上げる。

彼女にしては珍しい動きに篤希は首を傾げた。

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