オートフォーカス
「どうした?」

「ううん。あの、私前々から行ってみたい場所があって。」

「うん。」

相づちをうった篤希に加奈はまた目を泳がせて言葉を探す。

探すというよりは躊躇っているようにも思えた。

「…テーマパーク、なんてどう?」

「テーマパーク?」

少し言いにくそうに出した提案は意外なものではあった。

加奈は数回頷くと、カバンの中からチラシを取り出して篤希の前に出す。

「テーマパークっていうと大きいイメージあるかもしれないけど、ここはそんなに大きくなくて。でね、ここはヨーロッパをイメージした場所らしいの。今度そこに行こうかと思ってたんだ。」

チラシにはいかにもな風車小屋の写真が大きく掲載されている。

季節の花で作られた花時計や汽車もあるようだった。

植物園のようなものだろうか、全面的に季節感のある草花を紹介している文面が目立つ。

恋人同士や家族連れで行くには楽しめそうな場所だが。

「行こうかと思ってたって…1人で?」

「いま連れを見付けたよ。」

怪訝な顔をして伺う篤希ににっこりと笑う加奈。

< 168 / 244 >

この作品をシェア

pagetop