オートフォーカス
「さ、行こうか!」

肩にかけていた荷物をかけ直すと加奈は先に歩き出した。

まるで何事もなかったかのように振る舞っていたが、篤希の心に大きく爪痕を残している。

しかし声をかけるタイミングを失った篤希はそのまま加奈の後ろをついていくことにした。

「篤希!こっち凄いよ!」

歌うように呼ぶ加奈は笑っている。

このテーマパークの中には芝生広場があったり、レンガ造りの小路があったり、風車があったりと屋外は欧風の庭を意識して作られたものが多かった。

ポツンとある東屋のような小屋も忠実に再現しているようで、またその景色が異国の雰囲気を出している。

白いベンチの上に置かれた飾りのプレゼントもすっかりクリスマス仕様だ。

屋内の温室施設はヨーロッパの町並みを再現し、ここもまた季節の花とポインセチアが飾られていた。

妖精の存在を言い伝えられている地方がコンセプトということもあって小さなサンタクロースがたくさん住む村のようなディスプレイもあった。

「かわいい~!」

加奈以外にも女の子は皆このディスプレイの前ではしゃぎなかなか動こうとはしなかった。

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