オートフォーカス
日本製でない、海外独特の雰囲気の人形に本格さを感じた。

周りにいた2人組の女性が手に取るなり気に入って様子で購入をする。

意外にもそういったお客さんは多いようだ。

「そっか、もうすぐクリスマスか。」

不思議に思っていたが謎がすぐに解ける、まだ先の話ではなく、もうすぐの話だった。

あの神戸のアルバイト合宿からもうすぐ1年経つのだ。

「ドイツの人たちはこうやってクリスマスまでの時間を楽しむんだね。」

加奈の声に意識が現代に戻される。

いま横にいるのは加奈、そのことが不思議に思えて篤希は黙ったまま彼女を見つめていた。

今年も宜しくと手を繋いだあの日はそう昔のことではないのに懐かしく思える。

もしあの時、絢子から告白をされていれば受け入れただろうか。

学祭の時はそうだと思ったが今は少し違う。

きっと何かが過り篤希は首を縦には振らなかっただろう。

その理由はきっと目の前にある。

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