オートフォーカス
「どうしたの?」

「えっ?」

固まっていた篤希に加奈は不思議そうに声をかけた。

「あ、それ木製なんだなって思って。」

苦し紛れに目についた加奈の手元を指した。

彼女の手の中にはホウキで掃除をするサンタのオブジェがある。

「温かみがあっていいよね。私も買いたくなっちゃう。」

周りは皆楽しそうにクリスマス用品を買い物している。

ツリーもあればオーナメントもリースもある。

クッキーなどの日持ちするお菓子もあった。

アドベントカレンダーも種類が豊富だ。

キラキラとした飾りに心が踊る、ここだけが本当にクリスマスになったようだ。

「いつか本物に行ってみたいな。」

そう呟く加奈はランプの温かな灯りを受けていつもと少し違って見える。

距離が近付いたような、心地よい空気に篤希から笑みがこぼれた。

「僕も行ってみたい。」

海外なんてハワイしかいったことないけど、これからはもっと違う景色を見てみたい。

景色だけでなく、歴史的建造物を撮ってみたいのだ。
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