オートフォーカス
それでも止まらない会話に閉演のアナウンスが忠告をする。

ぞろぞろと帰っていく客に流され篤希たちも駅の方へと歩き始めた。

すると篤希の頭の上に雨が数滴降ってくる、それは加奈も同じだったようだ。

「あ、雨。」

「加奈、こっち！」

思いのほか勢いよく降ってきた雨から逃れるように２人はコンビニの軒下に向かって走った。

「あわわ…結構濡れちゃったね。」

加奈の言葉通り、２人はずぶ濡れになってしまっている。

コートを着てるとはいえ、頭が濡れて足元もびしょびしょだったら風邪を引いてしまうのは目に見えていた。

こんなに冷たい雨なら尚更だ。

吐く息がこんなに白い、このままでは凍えてしまう。

「このままじゃ風邪引く。加奈、うちに行こう。」

「え？」

「僕のアパート、実はここから近いんだ。そんな格好じゃ電車に乗れないでしょ。」

篤希にそう指摘されて加奈は自分の格好を改めて見つめた。

派手に濡れてしまったこの姿では贅沢をするタクシーでさえも嫌がられそうだ。

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