オートフォーカス
「加奈、上着脱いで。」

まだ玄関にいる加奈に篤希はタオルを渡した。

「風呂そこだから。服は洗濯機に入れて乾燥ボタン押しといて。」

手招きして中に入るように促す。

「ちゃんと脱衣場があるんだ。」

「街中からちょっと離れると広くても安いアパートはいくらでもあるんだよ。はい、着替え。」

予想以上にびしょ濡れになった加奈を風呂に入れ、篤希は部屋を片付けることにした。

遠慮しているのか部屋の造りに興味があるのか、のんびりとしている加奈を脱衣所に詰め込んでカギをかけるように指示をした。

しばらくして聞こえてきたシャワーの音にとりあえず篤希はホッとする。

風邪をひかないといいけど、そんな思いを呟くと自分の頭をタオルで拭いて部屋の片づけにとりかかった。

「お先でした…。」

まだ髪が濡れたままの加奈はタオルを頭からかぶって出てくる。

「はい、ちゃんと乾かして。」

ドライヤーを渡し、温かい飲み物を出して篤希もいそいそと風呂に入った。

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