オートフォーカス
「篤希お疲れ。どう、記録係になった感想は?」

そう言って焼きたてのたこ焼きを篤希に差し出す。

今日も笑顔が美しい。

煙の近くにいながらも少しの化粧崩れもしていない仁美はさすがだと思った。

綺麗なお姉さん、そんな言葉がぴったりの仁美に誘われてたこ焼きを買いに来る客も多いだろう。

ミスコン出演のオファーを断ったようだが、サークル長命令で強制参加させられるようだ。

彼女なら余裕でグランプリを狙える。

そんな仁美の写真を撮ってこいと記録係仲間からこっそり頼まれていたんだった。

余計なことを思い出したと篤希は心の中でため息を吐いて口を開く。

「それなんだけど…。」

「だーっ!あちい!」

仁美の写真を撮らせて貰えないか?

そう篤希が声にする前にTシャツの首もとをパタパタと扇いで雅之が現れた。

汗だくの姿は労働力の多さを感じさせる。

篤希が座ろうとしていた席の隣に当然のように座った雅之は態度も大きく背もたれに体を預けた。

「あー。」

疲労感を少しでも解消させるようにダルそうな唸り声が雅之から漏れる。

ふと仁美から貰ったたこ焼きに目をやって1つの可能性に気付いた。

このタイミングはもしかして。

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