オートフォーカス

現像した写真の束を加奈が手にしようとした瞬間、篤希が大きな声を出した。

驚いた加奈が篤希の方を見るとチャーハンを盛った皿を差し出した篤希が鼻息荒く立っている。

「ウィンナーも付けた。」

「あ、ありがと。」

無理やりつくった笑顔でおまけの存在を伝えると加奈も圧倒されて頷いた。

小さな机の上に置かれたご飯に誘われて加奈がやって来る。

あの場所から彼女が離れたことで篤希は小さく安堵のため息を吐いた。

あの写真の束の中には、図書館で無意識に撮った１枚がある。

それを思い出した瞬間全身から冷汗が吹きだして本当に焦ったのだ。

「いただきまーす。」

テレビ見ながらご飯を食べゆっくりしていると、浴室から乾燥が終わった音が聞こえてきた。

しかし窓の外の雨はさらに強く降っている、しかも終電に近い時間なことから結局加奈は泊まることになったのだ。

「変なことしないでしょうね。」

いつになく低い声で加奈が疑いをかける。

「し、しない…する訳ないだろ。」