オートフォーカス
消灯した部屋の中はいきなり静かさが目立ってかえって緊張感のある空間になってしまった。

しかしあれだけからかわれた後で加奈に何をどうこうするつもりはない。

興味がない筈がないが、悔しかったのだ。

でもこれは生殺しに近い状況下もしれない、早く寝ないと余計に悲しくなるかもしれない。

そう思って無理矢理にでも寝ようと固く目をつむった時だった。

「ね、篤希。」

囁くような加奈の声が話しかけてくる。

「どうした?」

篤希は目を閉じたまま声だけで返事をした。

「篤希はどうしてカメラが好きになったの?」

布の擦れる音がする、加奈が体ごと篤希の方に向いたのだと気配で分かった。

そしてその声はいつになく落ち着いた真面目なものだ。

質問と彼女の思いを受け止め、篤希は自分の中で答えを探す。

そして目を開けて天井を見つめながらゆっくりと口を開いた。

「きっかけは…加奈かな。」

「…私?」

「うん。」

声にすると何故か可笑しくなって笑ってしまった。

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