オートフォーカス
加奈に初めて出会った時はカメラに興味なんて全くなかった、あの受け答えで加奈にはその印象が強い筈だ。

だから不思議だったのだろう、マイカメラまで持つようになった心境の変化が。

「何も考えずに適当に撮った写真を褒めてくれた。そこからだと思う、もう少しうまく撮ってみようかなって気持ちになったんだ。」

篤希は加奈の方に顔を向けると、驚いた顔の加奈がこっちを見ていた。

また可笑しくなって眠気も覚めてしまう。

「やり始めたら楽しくなって、そこからはもう上に上にと目指していくだけだった。こんなに打ち込んだの久しぶりでさ、中学の時のRPGゲーム以来かな。」

「篤希ゲームするの?」

「もうやってないけどね。」

「うん、そんなイメージないや…。」

改めてテレビの周辺を見てもゲーム機器は見当たらない。

「中学生の登竜門みたいなもんだよ。皆やってた。」

「そうだね。で、今はカメラか。じゃあ、私は篤希の歴史に名前を載せられたってことかな?」

「あはは。そうだな。」

楽しそうに笑う篤希につられて加奈も一緒に笑う。

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