オートフォーカス
何回も夢見ては現実を見ろと自分に言い聞かせてきたことだった。

「じゃあ…どうして?」

「絢子には…他に気になる人がいるんだねって言われた。当たり、だったな。」

「他に、か。」

あの時、花火を見ながら言われた絢子の言葉を1つ1つ思い出していく。

あれから絢子にもあまり会っていない。

しかし加奈に連絡が取れないことが不安で自分が落ち着かなかったということもあった。

カバンの中の封筒が、何かを訴えるように篤希の頭から離れないのだ。

「確かにその子に自然と目がいくし、一緒にいると楽しい。…でも、しっかり前を見て歩いていく彼女を見てると…自分が情けなくもなる。」

「なんで?」

「中途半端な僕を置いてかれたみたいで。」

それは篤希の本心だった。

彼女はきっと離れていく、それも近い未来に彼女はここからいなくなってしまうのだ。

夢へと向かって旅立っていく。

あの夜、いつか自分も造ってみたいと夢を語った彼女の横顔は凄く綺麗だった。

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