オートフォーカス
「中途半端、ね。」

雅之の声がいつもより低く聞こえた。

それは聞き流しをしているのではなく、深く捉えてくれたのだと分かる。

それから篤希は加奈のことを少しずつ話し始めた。

初めて出会った学祭でのこと、一緒に過ごした日々のこと、そして彼女が大学を辞めるであろうということ。

篤希の言葉を相槌をうちながら雅之は最後まで聞いていた。

「俺は自動車の設計士になりたくてこの学部を選んだ。今は院に行くことを目指して勉強してる。」

「そうなんだ。」

工学部の雅之は何かやりたいことがあるのかと思っていたが、やはりそうだったと篤希は妙に納得してしまった。

雅之にもやりたいことはある。

真面目に講義を受けていたのは院を目指しているからだということも今初めて知ったことだった。

「学祭の時に会った隼人、覚えてるか?」

「うん。」

篤希は頭の中で学祭の時に紹介してもらった人物を思い出した。

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