オートフォーカス
人を惹き付ける不思議な魅力を持った隼人、毒舌な雅之とは違い爽やかな印象だったが仲の良さはありありと伝わってきた。

「あいつの彼女、俺らより1こ上なんだけど今イギリスに留学中なんだ。」

「だから遠距離恋愛?」

「そ。」

あの学祭の時に雅之が言っていたこと、それはこのことだったのだ。

「彼女の夢は異文化の人間と関わりながら仕事をすることらしいんだ。一番やりたいのは翻訳家って言ってたかな。」

「へえ。」

「で、隼人の夢は俺と同じ自動車の設計士。あいつも院を目指していて、海外ロケーションで働きたいって言ってる。」

具体的な未来図、自分で描いてそこを目指して頑張っている人は周りにこんなにたくさんいる。

篤希は自分の空っぽさを思い知らされ、感情までも空っぽになりそうになった。

何をやっていたんだ、今までの自分を情けなくも思う。

「…みんな凄いな。」

それしか言葉が出なかった。

凄い、それに比べて自分は、そんなことしか頭の中に浮かばなかった。

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