オートフォーカス
なんて淡白な人間なんだと虚しささえ感じるほどだ。

しかし篤希の考えを止めるように雅之の長いため息が聞こえてきた。

「…あいつら２人はな。」

雅之の表情は今の篤希と変わらない、冴えない顔をしている。

その意味が分からず篤希は目を細めて彼を見ていた。

「あいつら２人は…ちゃんと自分の目標を設定して、そこに向かう為の手段を調べ叶えようと努力してる。しっかりとした自分の意見も未来のビジョンも言えるだろう。」

その言い方はまるで別次元にいる人間のことを話すような口ぶりだ。

「雅之は違うの？」

思っていたことがそのまま口に出た。

篤希の言葉に雅之は苦笑いすると手を振って違うと示してくる。

「俺は車が好きで、設計士になりたいって漠然としたものしかなかった。でもそれじゃ駄目で、車の何を作りたいのかが必要だって隼人に教えて貰った。」

デザインをしたいのか、ボディを造りたいのか、ランプか、足回りか、内装か、エンジンか、車にしても部品はたくさんある。

またそれによって違う学部を選ばなくてはいけない場合もある。

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