オートフォーカス
「篤希…お前さ、本当はあるんじゃねーの?」

「え?」

「何かやりたいこと。諦めてるだけじゃねーの?」

雅之のその言葉に篤希は言葉を失って固まってしまった。

それはきっと雅之には図星だと捉えられただろう、その通りだった。

篤希には諦めてしまったものがある。

1度は夢見たものがある、夢なんて大げさなものではないが興味を持って未来を描いたものがある。

MBA。

それを捨てきれずにこの大学を選んで必要な講義も受講しているというのに、何をぐずぐずと足踏みしているのだろう。

教務課に行く加奈を見付けたあの時取りに行った資料は、前へ進もうとする素直な自分の行動じゃないか。

「やらない後悔より、やった後悔の方がスッキリするぞ。」

雅之の言葉が胸に響いた。

強く、響いた。



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