オートフォーカス
「放っとけって。またいつものオバサン根性が出たんだろ。」

「オバサンって…。」

そうは言っても仁美は篤希たちと同じ年のまだまだ若い女の子だ。

ただ、大人っぽい見かけとは違い、口を開くと意外にも世話好きな彼女のギャップに最初はみんな驚いていた。

美女の中身はお母ちゃんだったと。

てっきり人に尽くして貰う側の人だと思っていたから、裕二はそれを素直に口にしてご飯を奢らされていたような気がする。

そういうちゃっかりしたところはイメージ通りだった。

雅之の読み通り、すぐに戻ってきた仁美の手にはパンと焼きそばがあり、歩いてきた勢いのまま机の上にそれらを置いた。

ドンという音が仁美の気合の音にも聞こえる。

「はいっ!たこ焼きだけじゃお腹いっぱいにならないから、これも食べてね!」

「あ、ありがとう。」

圧されて苦笑いをする篤希に仁美は美しい笑顔を見せた。

これにやられた男性陣が多いのだ、もちろん篤希も例外ではないが異性よりも彼女の優しさを感じられて素直に嬉しい。

「残さないでよ?」

「食堂のおばちゃんかよ。…痛って!」

毒づいた雅之に逃げる間もなく制裁を与えると仁美は不機嫌そうに篤希の横に座った。

どうやら自慢の爪で一発かましたようだ。

< 20 / 244 >

この作品をシェア

pagetop