オートフォーカス
そう笑う加奈の鼻の頭は赤くなり、土産を差し出した手は大きく震えていた。

当たり前のように吐く息は真っ白に染まっている、暗くなった景色にそれはよく映えて見えた。

そう、今はもうとっくに日も暮れて町も静かになるような夜の時間なのだ。

一体いつから待っていたのだろう、篤希は怒りに似た焦りを感じ思わず加奈の腕を掴んだ。

「あつ…。」

「とにかく中へ!」

部屋の中に入っても外より少しマシなだけで寒いことに変わりはない。

それでも彼女を部屋の中へ引っ張り急いで玄関のドアを閉めた。

篤希は加奈を玄関に残し急いでエアコンを入れヒーターを点けてお湯を沸かし始める。

暖を取れる手段はすべて使う、今は一刻も早く加奈を温めないといけない焦りが篤希を追い立てているのだ。

「とりあえずヒーターの前で暖まってて。」

「うん。」

いつもと違う篤希の勢いに圧されながら加奈は部屋に上がって言う通りにした。

暖かい空気に思わず安堵のため息が漏れる、自然と凍えた両手をすり合わせてぬくもりを求めた。

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