オートフォーカス
暫くしてココアを入れたカップを持った篤希が加奈の前に立つ。

「これ飲んで。」

差し出されたカップからは湯気が出ていた。

それだけで今の加奈にはかなり魅力的な飲み物だ。

「ありがと。」

加奈は両手で受け取るとありがたくココアに口をつける。

笑みがこぼれて美味しいと呟いた。

「ビックリしたよ。一体いつから待ってた?風邪でもひいたらどうすんの。」

情けない声を出しながら篤希が加奈の前に屈む。

長いため息と俯いた姿は本当に焦っていたのだと加奈に伝わったようだ。

「ごめん。でも大丈夫、ほら手も暖まってきたし。」

手を出して握っては開くを繰り返しやって見せた。

確かに感覚は戻ってきているようだ、篤希は加奈の手を握り念の為に彼女の体温を確かめた。

冷たさは和らいで、ほのかに暖かくなっている。

「本当だ。」

心底安心したのかため息まじりに呟いた。

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