オートフォーカス
情けないがそれだけで全身の力が抜けてしまいそうなくらいに心配したのだ。

一体どれくらいの時間待っていたのだろう、それが頭から離れない。

しばらくして加奈の静かさに違和感を覚えて視線を手から顔に移した。

「加奈?」

「あ、ううん。はい、お土産。」

そう言って加奈は小さな紙袋を篤希に差し出した。

中を見るとさらにビニールの袋が入っている、パッと見で分かったがそれは外国のものだった。

さらに中を見るとそこには牛のぬいぐるみとポストカード、そしてハムが入っている。

篤希は中から物を取り出してマジマジと見慣れない外国語を見つめた。

「イベリコ…牛…まさかスペイン?」

「あたりー。スペインに行ってきたの。エスパーニャ。」

楽しそうに笑う加奈に少し懐かしさを覚えた。

1ヶ月も経っていない、せいぜい2週間程度会えなかっただけなのにこの気持ちは何なのだろう。

「スペイン…そっか、おかえり。」

何故かそう言ってしまった篤希自身も首を傾げた。

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