オートフォーカス
それは加奈も同じだったようだ、少し間を置くとあははと声を出して笑って会釈を返す。

「親孝行してきたの。母と娘の仲良し旅行。」

「そっか。楽しかった?」

「うん。最高だったよ!」

どうやら母親とはかなり仲がいいのだろう、彼女の笑顔は輝いていた。

貰ったばかりのお土産を少し持ち上げて改めてお礼の意味の頭を下げる動作をする。

部屋も暖かくなってきた、旅行のことをもう少し聞こうと思った瞬間に篤希はあることを思い出した。

「あ、そうだ。渡すものがあった。」

「私に?」

忘れないうちにと篤希はカバンから本を出して加奈に渡す、パラパラめくった加奈は封筒の存在に気付いて手を止めた。

短い沈黙が2人を包み込む。

「ごめん、その中身見た。」

「…そっか。」

加奈は怒る様子もなく封筒を手に取った。

そして中身を見て寂しそうに微笑んで篤希を見つめる。

「来年から大学を辞めて関西にある専門学校に行くの。」

「うん。」

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