オートフォーカス
何気ない文章と、お菓子の家の写真だった。

相変わらず長くも短くもない文章に加奈らしさを感じる。

加奈の癖だろうか。

それほど大きな字でもないが、必ず1列開けて文章を書いていく。

周りのざわざわとした雰囲気も気にならないくらい篤希はその手紙に集中していた。

顔がにやけないように気を付けていたが意味はあったのだろうか。

寝不足の体にそんな高等な技は発揮できない、篤希は今回に限って珍しく大学の食堂でそれを読んでいたのだ。

遅刻しそうだった為、ポストの中にあった手紙をカバンに突っ込みそのまま原付を走らせてきた。

いつもなら誰もいない部屋の中で一人微笑みながら読む手紙。

届いていたと分かっているなら早く読みたいとついつい大学で封を切ってしまった。

講義も終わり一段落ついて人もまばらな昼過ぎに食堂なら大丈夫だろうと一人でくつろいでいたのだ。

「相変わらず、か。」

そう呟いて手紙を机の上においた。

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