オートフォーカス
よし行こう、そう気合を入れた時だった。

「ラブレターか。」

納得するような雅之の呟きに篤希は苦笑いをした。

自分にとってそれに近いものだと思ってはいるがそれは口に出すと気持ち悪い人間になりそうだ。

「違うよ、ただの手紙。」

「いや、ラブレターだろ?」

お守りみたいなものだと続けようとしていた篤希に言葉をかぶせて雅之が言う。

視線は手紙に向けられたままだ。

「だから違うって…。」

「ラブレターだって。」

また篤希の言葉を遮った雅之の目は笑っていない。

からかっている風ではなかった。

篤希は雅之の意図するところが分からず目を細める。

彼は一体何が言いたいのだろうか。

「ほれ。」

篤希の気持ちが分かったのか雅之は手紙を指して促してきた。

手紙は今自分の手元にある、しかし雅之が言いたいことは別にあるようだと感じ、篤希は不思議に思いながら手紙の裏を覗いてみた。

裏に何かあるのか。

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