オートフォーカス
長くもない文章のわりに2枚に分けられた便箋、それにこんな意味があったなんて少しも気が付かなかった。

必ず1列空けて書く文章にそんな意味があったなんて知らなかった。

長く書けなかったのだ、長くすると何か余計なことまで書いてしまいそうで出来なかったのだ。

だから2枚になるように列を空けていた。

一体いつから待っていたのだろう。

まるであの寒い冬の夜のように加奈はずっと自分を待ってくれていたのだと思ったら何とも居た堪れない気持ちになった。

もう、抑えることは出来ない。

「…加奈。」

彼女の名前を口にしたことで涙が遠慮なしに次から次へと零れ落ちていく。

このがむしゃらに過ごしてきた2年間の意味を自分の中で見失いそうになった。

なんて不器用なのだろうか。

どれだけ鈍いのだろうか。

“ねえ、アツキ。少しは私のこと、好きでいてくれたかな?”

この言葉に答えたい。

「好きだよ。」

篤希は手紙を握りしめ、祈るように額に当てた。

「今でも…好きだよ。」

今は彼女に届かなくても、答えずにはいられなかったのだ。
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