オートフォーカス

２.大人だね

雅之が吐いた白い煙が宙を舞う。

まだまだ吸えそうなのに、雅之は怠そうな仕草でそのまま灰皿へ押し付けて煙草の火を消した。

ちらりとたこ焼きを頬張る篤希の方を見て方眉をあげる。

「大人だね～篤希くん。でも、そんなこと言ってる場合じゃないんじゃね？」

不敵な笑みを浮かべた雅之が篤希に思わせぶりな言葉を投げた。

彼の言葉の意味が分からず篤希は口の中をもぐもぐしながら首を傾げる。

「何が？」

やっとの思いで飲み込み雅之に尋ねた時、その言葉に被せるように声がした。

「篤希くん。」

いいタイミングで背後から声がかかり篤希は反射的に振り向く。

当たり前のように心臓が跳ねたのは、声を聞いただけで声の主が誰だか分かっているからだ。

「お疲れ様。はい、これどうぞ。」

思った通りの人物に篤希は自然と微笑む。

そこには優しい笑みを浮かべてペットボトルを差し出す女性、絢子がいたのだ。

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