オートフォーカス
人当たりの良さそうな、おじいちゃんに近い年齢の教授。

その毒気のない笑顔の裏側にある黒い圧力に、思わずゾッとしてしまう。

関わらないと分からない彼の恐ろしさに油断していた篤希は見事に捕まってしまったのだ。

常にニコニコと笑っている人ほど腹黒い、話し易い人は必ずしもいい人とは限らず紙一重で要注意人物なのだと学んだことはこれからの人生に役立つだろう。

かなり有難い経験値だ。

そう思うとそんなに落ち込むこともなかった。

「まあせっかくだから楽しんでるよ。」

そう言って篤希は煙草に口をつける雅之をカメラにおさめた。

油断していたから素の雅之が撮れた、絵になるショットに篤希は満足気に笑う。

やっぱり雅之は絵になるなと1人で満足してしまった。

「おい、記録係。何やってんだよ。」

「うん?オフショット撮影。」

何も気にせず答えた篤希はもう1枚雅之の姿をカメラにおさめる。

やっぱりカッコいい、篤希は自分が撮ったものに満足して何度も頷いた。

1人達成感を味わう篤希に雅之は眉間にシワを寄せる。

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