オートフォーカス
「そうなんだ。」

どこか腑に落ちないものの納得はしたという顔だが、これ以上は答えを求めないようだ。

「要は篤希が個人的に仁美の写真を欲しいって野郎に頼まれた訳だ。」

雅之の言葉に、少し違うかなという態度で唸り声をあげると篤希は首を傾げた。

「なんかミスコン出場者には一通り打診するみたいよ？」

複数人の要望だと知り雅之はあからさまに嫌そうな顔をする。

舌を出して嫌だ嫌だと首を横に振った。

「経営側が考えそうなこった。ミスコン断って正解だな、絢子。」

姿勢正しく座っていた絢子に突然話がふられ、一度深呼吸するみたいに空気の質が変わった。

絢子の上品な空気に染まってしまったのだ。

「私には荷が重い話だったから。」

そう言って首を振り苦笑いをする。

十分グランプリを狙えるくらい絢子も綺麗なのに。

そう声にしたかったけどさすがに恥ずかし過ぎて篤希は自分の中に留めた。

「勿体無い。」

自分なりに精一杯の言葉を口にすると絢子は笑ってくれた。

やっぱり綺麗だ。

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