オートフォーカス
優しい眼差しを細めて口角を上げる、それだけなのに何が他の人と違うのだろう。

人を魅了する絢子の笑顔にやられてしまったのは篤希だけではない筈だ。

「本当、勿体ねえ。」

雅之の言葉に篤希は何度も頷き、絢子は困ったように笑った。

「篤希くん、ご飯足りる?」

話題を変えるように手を出し、篤希の手元に視線を向けて絢子は尋ねた。

空になりつつあるトレイを見て気にしたのだろう。

「うん、大丈夫。」

篤希は残りを一気にたいらげ、手を合わせた。

仁美のおかげで十分に胃袋は満たされ午後からも頑張れそうだ。

「ごちそうさまでした。」

様々なことに感謝をして篤希は声にした。

横から吹き出す声が聞こえて雅之に表情で問いかける。

「何でもない。お粗末様。」

そう言って手を振る。

そういう奴は嫌いじゃないと機嫌良さそうに笑う雅之をよそに、トレイは絢子が素早く片していつの間にか目の前には何も無くなっていた。

「絢子ありがとう。」

篤希の言葉に絢子はふわりと微笑んで首を横に振る。

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