オートフォーカス
「絢子?」

「あ、ごめん。仕方ないよね。大変だな…。」

心配をしてくれたのか、そう思うとまた小さく絢子への思いが開きそうになった。

しかし止めておけとすぐに違う自分が止めてくれる。

優しい子だなと、今はそう思って心配をかけないことの方が正解だろう。

「なるべく楽しむようにするよ。」

そう言って手の中にあったカメラを掲げた。

実際さっきから少し面白くなってきているのだ。

カメラを眺めて微笑む篤希に絢子もつられて表情を柔らかくする。

「篤希くんの写真、凄く上手だったから…皆楽しみにしてると思う。」

「そうかな?」

「そうだよ!光の入り方とか配置とかが巧いって皆言ってたじゃない?凄く綺麗だなって私も思ったの。」

小さく握りしめた拳を胸元で何度も震わせる。

絢子の必死さは感じられて嬉しかったが、やっぱり埋まらない気持ちの隙間はそのままだ。

「ありがとう。」

そうは言っても納得がいく顔をしていないのは自分でも分かっている。

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