オートフォーカス
ころころと変わる表情に篤希は可笑しくなって笑う。

「いや。ありがとう。」

少し気持ちのモヤモヤがなくなった気がした。

加奈が言ってくれた“気に入った”という言葉に篤希は曇っていたフィルターが外れたようだ。

もし、教授もこの作品を気に入ってくれたのならば、それは何の飾りもなしに嬉しい。

技術的なことや芸術的なことをいくら褒められても篤希には全く理解が出来なかったが、もし感覚的に選んでくれたのなら。

「気に入ってくれて…素直に嬉しいよ。」

作品を見て、そして加奈を見て篤希は微笑んだ。

加奈もそれに答えるように笑顔を見せる。

「上手、だよね?」

それは技術的なことは分からないが賞を取っていることはそういことだろうと聞いているようだった。

「どうかな?僕にもよく分からない。」

苦笑いして首を傾げる。

どれだけ褒められてもよく分からなかったのだ。

そんな篤希の様子に笑っていると、加奈は思い出したように携帯を取り出して篤希に見せた。

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