オートフォーカス
こちらも存在を忘れていたようで、視界に入れた篤希が軽くため息を吐く。

「カメラで学祭の様子を撮影するんだ。」

「へえ。この写真の腕が認められて?」

加奈の言葉に任命された時の様子がフラッシュバックされる。

篤希の顔は正直に不満を訴えた。

やっぱり問答無用の記録係指名は理不尽だと不貞腐れる。

「聞こえはいいけどね。罠にかかった気分だよ。」

曲がった口元が不満の大きさを表しているようだ。

少し楽しくなってきたとはいえ、やはり腑に落ちないからここに来たのもある。

素直すぎる篤希の反応に加奈は思わず吹き出してしまった。

「あはは。でもセンスのいい人に撮って貰った側はラッキーだね。」

「そうかな。」

それは正直、篤希には関係のない話だから知ったことではない。

またまたどうでもいいと素直に反応する篤希に笑いが込み上げてくる。

「それに構内を隅々まで歩くんだったら誰も知らない穴場を見付けたり出来るかも。うん、案外ハズレじゃないかもね。」

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