オートフォーカス
「君、レモンの香りがする。」

一瞬、何を言われているか分からなかったが、口の中の飴が踊り意味に気付いた。

さっき噛んだ飴か。

「良かったら、食べる?」

絢子から貰った飴を1つ取って、差し出した。

「ありがとう。」

照れたように笑いながら受け取る加奈に篤希は何かを感じた。

なんだろう。

そんなことを考えている間に彼女はもういなくなっていたけれど。

宮間加奈。

そう名乗って風のように去って行った彼女の言う通り、記録係は案外ハズレではなかった。

見事に見付けた誰も知らない穴場は、在学中これからの篤希の癒しの場になっていたのだ。

それは大学生活の後半、篤希にとって大切な場所になった。

1年の大学祭。記録係になって得たものは、カメラの技術と構内での逃げ場所。

そして、加奈との出会いだった。






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