オートフォーカス
第3章 冬のバイト

1.日当こんなもん

どの大学も昼の時間になると必然的に食堂というものは混むものだ。

食券を買うのにも並ぶし、商品を受けとるのにも並ぶ。

席を見付けるのだって大変になるし、お茶を汲むのだって並ばなければいけない。

しかしそんな食堂も、お昼という魔の時間帯を過ぎれば人がまばらな空間に変わる。

今はその有意義な時間だった。

広い空間にポツポツとしかいない人の影、授業の空き時間を寝て過ごしたり友達とのお喋りに夢中になったりと生徒たちは思い思いに食堂で過ごしていた。

大学に来たらとりあえず食堂に顔を出す、そうすれば仲間内の誰かがいる。

そんな習慣がつくのも意外と早いもので、1年生の夏にはすっかりとそれは定着していた。

座る場所もだいたい同じと決まっている。

それぞれが広い構内と大多数の人間が集まる場所に見付けた自分なりの居場所だ。

それは安心できる場所であり、自分の存在を認識させる意味も持っていた。

ちょっとした心のよりどころなのかもしれない。

篤希たちはいつもと同じように自然とそこに集まり、空き時間を利用して他愛ない話をしていた。

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