オートフォーカス
予想以上の施設内容に目を輝かせて集中している。

こんなの学生身分が泊まれるような場所じゃない、就職したからと言って泊まれるかどうかも分からない。

「凄い…本物の老舗旅館じゃない。格式高そう。」

「値段も高そう。」

「葛飾家に歴史ありってなもんよ。」

予想通りの反応に裕二は満足な笑みを隠せない。

しかし誰も彼のそんな姿には興味を示さず、仁美の手の中のパンフレットに釘付けになっていた。

「えっ?神戸?」

パンフレットに顔を近付けて仁美が声を上げる。

声を出していない他の3人も同じような反応をしている。

「そ。山側だから皆が想像してる神戸とはちょっと違うと思うけど、時期的にはイルミネーションとかで街の雰囲気はいいぜ?」

裕二の言葉に女性陣2人が期待したような表情に変わる。

確かにこの時期、街はイルミネーションで輝き寒さも忘れるくらいに興奮するものだ。

「カウントダウンとかもあるんだろうしな。」

「さすが雅之、ご明察!近くで何ヵ所かやってるし、何よりこのバイトそういうイベントの時はフリーなんです!」

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