オートフォーカス
そうは言ってもバイトはバイトだ、住み込みなんて時間の余裕がないのではないかと仁美が目で訴える。

しかし裕二は爽やかに笑うだけで最初からその質問を待っていたようだった。

「時間は作るものさ。俺に任せなさい！」

そう言って裕二は神戸の旅行雑誌を勢いよく机に叩き出す。

数種類の雑誌が並び、その準備の良さに感動の声が上がった。

「さすが裕二。」

仁美に褒められてテンションの上がった裕二は調子にのったらしい。

取り繕うのをやめて、本能のままに動き出した。

「だろ？な、仁美はどこに行きたい？俺バッチリ案内するぜ！」

「本当～？」

「任せろって！」

裕二の自信満々な顔に乗せられて仁美は絢子と一緒に雑誌を広げて楽しそうに話し始めた。

雅之は軽く裕二を指しながら視線だけで篤希に訴えてくる。

その目は呆れたものではなくて楽しんでいるものだった。

裕二は仁美に惚れているらしい。

そんなことを人から教えて貰わなくても分かるくらい裕二は仁美に分かりやすくアピールをしていた。

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