オートフォーカス

目の前にいる仁美は明らかにおかしなテンションだ。

「急にどうしたの？」

「だって気になるじゃない。普段、淡白っていうかクールな篤希はデートするとどんな感じになるのかなって。ね？」

「えっ？あ…うん。」

同意を求められた絢子は頷いたものの申し訳なさそうに篤希を見上げた。

明らかに篤希は困っているのが見て分かる。

「ね、１回私とデートしてみない！？」

「はあ！？」

あまりの発言に篤希は目も口も大きく開けて間の抜けた声を出した。

その声に雅之と裕二も反応したようだ。

新たに加わった視線に篤希は目を泳がせた。

「ちょっと、仁美！」

さすがに本格的に変な雰囲気になり始めた仁美を止めようと、絢子は彼女の腕を引っ張る。

しかし効き目はないようだ。

「１回デートしたらどんなものか分かるもん、ね！しようよ、篤希。」

「えー…っと。」