オートフォーカス
「ご馳走用意しとるさかい、早よ部屋に戻って食べなはれ。ほな、明日から宜しゅうに。」

早口で進めるも最後だけはゆっくりと話し、丁寧に頭を下げて女将は仕事に戻って行った。

やはりその動き、言葉に無駄はない。

早口でもきちんと聞き取ることが出来るし内容も理解できる、さすがの仕事振りに圧倒されてしまった。

何より所作全てが美しく見える。

「綺麗な人…。」

「ね、私も思った。」

いくつ年を重ねても綺麗だと思わせることは女性にとっては理想。

絢子と仁美の思いは同じだったようで二人は女将が去った後の扉を見つめながらポツリと呟いた。

それに首を傾げたのは特に彼女を見慣れた裕二だ。

「そお?」

「とにかく飯にしようぜ。明日からに備えねえと。」

雅之の言葉に自分たちの感覚を取り戻し現実に引き戻される。

そうだったと忘れかけていた疲労感が戻ってきた。

「部屋ってどこ?」

「案内するよ。」

篤希の問いに手を挙げたのは勿論裕二だ。

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