オートフォーカス
いざ出会ってしまった時の為の経験なのだろう。

しかしそれは建前で本音は肉体労働をする学生アルバイトへの優しさなのかもしれない。

むしろ孫への愛か。

これは思ったよりのんびり出来る、食事を済ませ温泉に浸かりながらぼんやりと思った3人だった。

しかし、その考えは甘かったらしい。

翌日から合宿は見事に本格化したのだ。

「おら動けや!日ぃ暮れるんぞ!」

「はいっ!」

金を払って雇ったバイトに孫という称号は何の盾にもならなかった。

そこに遠慮は無い、まったくと言っていいほど無い。

「1人こっち来い!」

「はいっ!」

まるで体育館裏にでも呼び出されたような気分で篤希は向かう。

最初は固まって働いていたが、段々と個々に仕事を言い渡されるようになり、朝部屋を出て帰ってくるまで顔をあわせないということもあった。

疲労で倒れ、ろくに会話もしないまま寝てしまう日もある。

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