オートフォーカス
あるとしたら、

「関西弁で怒られた。すげえ怖い…思い出すだけで泣きそう。」

という嘆きだった。

廊下ですれ違って久しぶりに会ったと勘違いするほど、弟子入りしたかのように遠慮なしに働かされている。

想像していたより忙しい日々が続いたが、裕二の言っていた通り午後から休みになって神戸観光をすることも出来た。

その辺りは孫という称号が活かされているのだろう。

南京町で中華料理を食べたり、北野の異人館に行ったり、大阪まで足を伸ばして食い倒れツアーをしたりと十分に２週間のアルバイト合宿を楽しんでいた。

午前の疲労を忘れて思いきり羽を伸ばして神戸の街を満喫する。

「雅之、篤希！今日はもう上がっていいってさ！」

宴会の片付けをしている２人のところへ声を弾ませながら裕二が滑り込んできた。

「まだ終わってねえよ。」

「どうかした？」

手を動かしながら顔も見ずに答える雅之に篤希は言葉を足す。

「カウントダウンだって！仁美と絢子も上がって準備してる。行こうって言ってただろ？許可が下りたから行こうぜ！」

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