オートフォーカス
せかせかと働く姿にじゃあ急いで終わらせようかと大人たちも気合いを入れ直す。

心なしかいつもの指示する声も優しさが目立っている気がする。

最後に会場の扉を閉めると3人は猛ダッシュで部屋まで戻って支度を始めた。



今年のアルバイトも残すところあと僅か、上がっていいと言われて5人はカウントダウンのイベントに来ていた。

「女将は若者の気持ち分かってるね、こうして上がらせてくれるなんて。」

「ある程度落ち着くからって言ってたけど、きっと忙しいままだよね?」

どうやら仁美と絢子は女将から直接上がっていいと言われたらしい。

旅館の様子を気にしながら歩く2人の背中をポンと叩いて裕二は明るい声を出した。

「気にしなーい!好意は素直に受け取らなきゃ!おっ、凄い人だな。」

裕二の視線はこれから向かう先にある。

彼の言葉に促されて目をやると、まさにその通りの光景が見られた。

とてつもない数の人で賑わっている。

時刻はけっして早い訳ではない、いつもなら皆家に帰ってゆっくりする頃だがこの日は特別だ。

< 82 / 244 >

この作品をシェア

pagetop