オートフォーカス
上目遣いで篤希の様子を伺って絢子は言葉を紡ぐ。

それは絢子の癖なのだろうが、世間一般の男にはたまらないものだった。

まるで自分が意識されているかのように感じる、なんと罪なものだと誰もが言っていた。

だからという訳ではないが、絢子は異性から意識される率は高いだろう。

そして篤希もそのパーセンテージに貢献しているのだ。

しかしここで調子にのらないようにと自分を戒め、言葉だけを少し曲がったところから受け止めた。

「うーん…それは褒められてる?」

「もちろん!」

屈折しすぎたのか、絢子は悪い意味じゃないと慌てて弁解するように両手拳を握った。

「ははっ!ありがとう。絢子の仲居さん姿も似合ってるよ。」

やはり他意はなく、褒めてくれたようだと篤希は笑った。

ただの友人の一言だと思えば変に自分の感情が乱れずにすむ。

さっきの自分の判断を褒めながら、ふと意識を外に向けた。

イルミネーションの雰囲気が変わり周りも談笑から騒ぎ始めたようだ。

なんとなく空気で分かる、カウントダウンが始まるのだと自然と身構えた。

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