オートフォーカス
電話の向こうの雅之は言葉なく目を大きく開いて篤希の決意を受け止めていた。

「…マジだよ?」

穏やかだか強い意思をもった声に雅之は何とも言えない。

冗談じゃなく、真面目に受け入れてくれた。

それが分かると篤希は小さく息を吐いて目を閉じた。

「どうなるか分からないけどね。でも僕も出さなきゃと思ったんだ、ラブレター。」

そう言ってコートのポケットの中にある手紙を握りしめる。

篤希は目を閉じてある記憶を思い出していた。

どうか届きますように、そう願って吐息が震える。

「今から渡しに行く。…受け取ってもらえるか心配だよ。」

「まぁ…出た結果を受け止めるしかないだろ。」

「そりゃそうだ。」

いつもの雅之節に思わず笑ってしまった。

篤希は大きく息を吐いて目の前に広がる夜景を見つめ、その果てに思いを馳せた。

今から、あそこに向かう。

「ちょっと緊張してたから…この電話助かった。」

「…そっか。感謝しろよ?」

震えていた呼吸を落ち着かせるよう、飾らない雅之の言葉に篤希は思わず笑ってしまった。

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