オートフォーカス
素直な気持ちを口にすると加奈は当然のように返してきた。

「なんでって…好きだから。」

答えを求めた質問に三角の、いや、間違いに近い回答が戻される。

それには少し期待していた分、篤希は項垂れた。

「だから、その理由…。」

「特に理由はないよ。好きになっちゃったの、それだけ！」

まっすぐ加奈に見つめられ篤希は言葉を失う。

投げやりな答えじゃなく真正直に出した気持ちだと彼女の目が訴えていた。

それは伝わってきたが、受けた側の気持ちとして目を泳がせてしまう程の動揺はなんだろう。

今の言い方はまるで。

「やだ、今の告白みたいじゃない？恥ずかしい。」

両手を頬にあて、わざとらしい素振りで加奈はしおらしくしてみた。

おかげで速くなっていた篤希の鼓動が失速し始める。

ありがたいことなんだが、どうもしてやられた感じが拭えない。

いつもくるくる変わる彼女の表情や仕草や言葉に振り回されるのだ。

それでも嫌な気分にならないあたりがさすがは宮間加奈といったところか。

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