オートフォーカス
ずっと持ち歩いている写真、彼女が取り出したのは手帳の中からだった。

手帳の中に挟んで大事にしてくれているのだろうと思うと何とも言えない気持ちになって落ち着かなくなる。

このまま隠したいような、返してあげたいような、自分ではなんともし難い感情にくすぐったくなるのだ。

「この写真、鮮やかだけど透明感もあって…本当に好きなんだ。私もこんな写真撮れたらって何度も思った。」

そう呟く彼女の姿は今までにない珍しい表情をしていた。

心の底からそう思う、それを全身で表現するような雰囲気に彼女の思いは屈折することなく篤希の中に入ってくる。

悪い意味ではないが、初めて見る加奈の真面目な表情に驚いたのだ。

「…カメラ、好きなの?」

「ううん。これで撮るくらい。」

加奈は携帯をかざして肩をすくめた。

「十分じゃないの?」

「うーん…手軽だけどね。」

特に何かある訳でも無いのに携帯を裏返してみた。

そしておもむろに携帯を操作しながら言葉を続ける。

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