オートフォーカス
「やっぱり画質もね。ほら、気に入ったものは綺麗に撮りたいでしょ?」

パシャリ。

単純な電子音だが、確かにシャッターのきれる音がした。

「あ。」

「へへっ。盗撮。」

携帯を向けられていたのは篤希、彼女の言うように彼は見事に盗撮されていたのだ。

あまりにもスムーズな流れに何も言う言葉が出てこない。

これだ、これこそがいつもの加奈のペースなのだ。

ちょっと油断するとすぐに脇腹をつつかれるような敗北感、またやられたと篤希は素直に頭を抱えた。

「さてと、そろそろ移動しないと次の講義に間に合わないや。」

そう呟くと加奈は机の上に広がったままの応急措置した本たちをせかせかとカバンにいれ始めた。

その中の1つである教材の本を見て篤希が気付く。

「あ、次って基礎心理学でしょ?一緒。」

手にした本を渡しながら篤希が声をかけた。

意外な言葉に加奈は大きな目を何回か瞬きさせ口を開く。

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