本当の私は甘いかも。
プロローグ
まだ肌寒い5月の朝。
それは突然やってきた。
私、立花 歌穂(たちばな かほ)はいつものように大学に行く準備をしていた。
長い黒髪を丁寧にブローして、メイクもナチュラルに済ませて…。
―ピンポーン
「こんな忙しい時間に誰?はぁー」
私はめんどくさかったから無視するつもりだったのだが
ピンポーンピンポーンピンピンピンポーン
何度も鳴らされるチャイムにそうもいかなくなった。
近所迷惑だって!あぁー出ればいいんでしょ?まったく…。
「ちょっと誰ですか」
イライラを隠さないで玄関の扉を開けるとそこに立っていたのはサングラスに黒のスーツを着こなしている、大男。
「………」
その大きさと威圧感に私はゆっくりと扉を閉めようとする。
ガシッ
ひぇぇぇ
だけど寸前で大男の手が扉をこじ開けた。
「ふっ…不審者!!来るな」
「おおっと…これは失礼いたしました」
その声は大男からではなくその後ろから聞こえてきた。
大男の後ろから小柄な白いヒゲを生やしたおじさんがひょっこり顔を出す。
にっこりと笑っているおじさんはとても感じのいい人で、私は叫ぶのを一旦止める。
「私達はこういう者です」
おじいさんは胸ポケットから名刺を取り出し私に丁寧に差し出す。
恐る恐るそれを受け取って見てみると…
「北川株式会社………」
ちょっと待って。
北川株式会社っていうとあのメチャクチャすごい日本一のグループのことだよね?!
えっ、そんな凄いグループが私に何の用なの…。
私は不信感の眼差しをおじいさんに向けた。
するとおじいさんは一つ咳払いをしてから改まって真顔になる。