本当の私は甘いかも。


西条さんは驚いた顔をしたが直ぐにいつもの表情に戻り何も言わなかった。


驚くほど似てたって事だよね?


私は調子に乗ってもう一粒いちごを摘もうとした時、


「あら!一郎さんに有理ちゃん。久しぶりですね」


背後から色っぽい女性の声がかかり私は慌てて手を引っ込めた。



「幸子ちゃーん!」


さ、幸子ちゃん?



私が振り返るのと同時に社長と幸子ちゃんがハグをする。



う…浮気!?



幸子ちゃん…というより幸子さんはスラッとした体型に唇がすごく色っぽかった。



若そう……やっぱり浮気…?


「松坂屋社長の妻、松坂 幸子(まつざか さちこ)様でございます。ちなみに、いつもこのような調子で挨拶を交わしております」


西条さんがこそっと教えてくれる。



挨拶なのね、これが。アメリカみたい。


私が2人の様子をまじまじと見ていると、幸子さんが社長から離れて今度は私の方に向かって腕を広げた。


えっ?これって…。



「有理ちゃん。おいで」



やっぱりそうきたかっ。



私は頭の中の有理お嬢様メモからこういう場合の対処法を引っ張り出す。



「いえ、私は遠慮しておきますわ」



私は微笑みながらやんわりと断った。



「そぉ?残念だわ~」



そう言いながら幸子さんは広げた腕を社長の腕に絡めていた。



………社長。



鼻の下伸びてる。



「じゃあ、有理。適当にパーティーを楽しむんだぞ。…西条行くぞ」



えぇっ行っちゃうんですか!!



西条さんに目を向けると、口パクで何かを言ってから社長と幸子さんの後ろについて行ってしまった。



“頑張って下さい”


……って頑張れるかい!


西条さんの口パクメッセージにため息を零してから、私は周りの様子を窺う。

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