本当の私は甘いかも。
「そうだな…お前の堅苦しい喋り方を直したら退けてやる」
“やる”!?何その上から目線!
なんか、ムカつく。
何て思って睨んでいたら、大和の手が私の頬に添えられた。
「!!!」
「ほら、早くしろよ。じゃないと、このままキスするぞ」
キス!?はああああ!!ダメダメダメ、絶対ダメ!
「分かったから!大和離してー」
顔がさらに熱くなるのを感じながら叫ぶ。
「いい子」
大和はそっと私の耳元に唇を寄せ囁く。
そんな、耳元で喋らないでっっ!くすぐったいし恥ずかしいし、ドキドキが止まらないんだってば。
聞こえちゃうから早く離れて…。
私の願いが通じたのか、ようやく解放してくれた大和。
でも、大和が離れても一向に引かない熱に身動きが取れないでいると
「どうした?」
なんて平然と言うから、私は深い溜め息を吐き出していた。
どうしてあんなに平然としてられるんだろう…?
やっぱり社長の息子だから、女の子とは…その…関係といいますか、そういうのに慣れてるのかな?
てか、私何でこんなこと考えてるんだろ。
何でちょっぴり、胸が痛いんだろ。
「なんでもない」
私は胸の痛みを掻き消すように首を振る。
「じゃあ、戻るか」
「うん」
大和が先に歩き出し、その後ろについて行く。
そしてもう少しで会場、というところで私は重大なことを忘れていた。
「ちょっと待って!」
咄嗟に大和の腕を掴む。
「私が歌穂だってことは、誰にも言わないで欲しいの」